建築業界へ転職を考えている方は、業界内の色々な職種について調べていることでしょう。今回取り上げるのはシロアリ駆除や消毒の仕事です。シロアリが発生すると建物に深刻なダメージを与える可能性があり、シロアリ駆除や消毒の仕事は木造の住居や店舗、神社やお寺などといった幅広い需要があります。
とはいえ、シロアリ駆除や消毒といっても具体的な仕事内容はイメージしにくいかもしれません。そこでここではシロアリ駆除やシロアリ消毒の仕事内容を見ていきながら、転職を考えている方へやりがいや給与なども紹介します。
シロアリ駆除・消毒の仕事内容
転職する際の参考になるように、シロアリ駆除や消毒の仕事内容を確認しておきましょう。シロアリ駆除は建物の内部に発生しているシロアリを駆除し、シロアリ消毒は建物にシロアリを寄せ付けないようにする予防措置です。
どちらの場合もまずは床下の状態をチェックしてお客様に見積もりを提示し、納得していただいてから作業にかかります。転職後はシロアリや薬剤についての知識をつけてから、現場に出て作業を身につけていくことになります。
シロアリ駆除・消毒のバリア工法
シロアリ駆除・消毒の一般的な工法は、床下などに薬剤を散布するバリア工法です。薬剤を散布することでシロアリを駆除できるのはもちろん、薬剤がバリアとなり建物をシロアリの侵入から守ります。
バリア工法には2つの工程を行うことになります。
・土壌処理
防護服と防毒マスクを身につけ、噴霧器を持って建物の床下に潜り薬剤をまんべんなく散布します。床下は高さがないため、ほふく前進の体勢で動き、時には穴を掘ったり梁を壊したりしながら作業をこなす必要があります。
・上周り処理
床下の消毒が終わると次に室内の消毒に移ります。キッチンやトイレ、風呂場などシロアリが発生しやすい場所の壁や床に小さな穴をあけ、そこに薬剤を流し込みます。薬剤を流し終わったらパテで穴をふさぎます。
消毒作業にかかる時間は大体4時間から5時間ほどです。この2つの処理に加え必要であれば家の外周の消毒も行います。シロアリによるダメージの度合いによって、修復やリフォームが必要になることもあるでしょう。
シロアリ駆除のベイト工法
シロアリ駆除にはバリア工法の他にアメリカ発祥のベイト工法もあります。ベイト工法では地中にシロアリ用の毒エサを埋め込み、巣の中のシロアリを徐々に駆逐していきます。毒エサはIGR剤で脱皮する動物にしか影響しないものなので、人間はもちろん犬や猫などのペットが誤って触ったり口にしたりしても問題ありません。
ベイト工法を行う場合もまず床下の状態からシロアリの生息地店などを確認し、床下や敷地内に間隔を開けながら毒エサを埋めていきます。作業にかかる時間は2時間程度です。
シロアリ駆除剤が人体に与える影響について
転職を考えるならシロアリ駆除や消毒で使う薬剤の人体への影響についても知っておきたいものです。ベイト工法の毒エサは人間にはほぼ無害とされていますが、バリア工法の薬剤には注意が必要な場合があります。
シロアリ駆除・消毒に使われる薬剤の種類
シロアリはゴキブリの一種で駆除するにはそれなりに強い殺虫剤が必要なため、シロアリ駆除や消毒には過去に有機塩素系や有機リン系の薬剤が使われていた歴史があります。ただ有機塩素系薬剤は土壌汚染が、有機リン系薬剤はシックハウス症候群が問題となり、使用禁止になりました。
現在使用されているのはより安全性が高いとされるこちらの薬剤です。
ネオニコチノイド系薬剤 | ニコチンに似た殺虫成分を含む。シロアリに対する効果は高いが、人間やペットの哺乳類や魚に対する安全性が高い。臭いが少なく揮発しにくいので床下に散布しても室内に薬剤が侵入しにくい。 |
合成ピレスロイド系薬剤 | 除虫菊の成分を含む。即効性がありながら散布後の予防効果も期待できる。人間への安全性が高く、市販の殺虫剤などにも使われている。 |
フェニルピラゾール系薬剤 | 少しの量で効果を発揮する強力な薬剤で、シロアリが気付かないうちに巣の中にいるシロアリにまで伝播して駆除。毒性が強く人体に影響する可能性あり。 |
ホウ素系薬剤 | 防腐剤に使われる成分で安全性が高く臭いも少ない。シロアリ駆除し木材を腐敗から守れるものの、水に弱い。 |
アントラニリックジアミド系薬剤 | アメリカで危険が低いと認定されたまだ新しい薬剤。シロアリ以外の生き物にやさしい。 |
ヒノキチオール系薬剤 | 化粧品に使われるほど安全性が高いヒノキの成分含有。駆除ではなく予防に使われる。 |
カーバメート系薬剤 | シロアリの神経を麻痺させる薬剤。効果が高いがシックハウス症候群の危険性が指摘されたことで、あまり使われなくなっている。 |
現在一番よく使われるのはネオニコチノイド系の薬剤です。
シロアリ駆除・消毒は安全に行えるか?
作業員は防毒マスクをつけているとはいえ、狭い床下でシロアリ駆除剤を散布するので、健康被害がないかどうか気になるでしょう。ただ現在使われている薬剤は安全性が高くなっているため、ほとんど健康には影響しないものです。しかしながら、安全に使うにはきっちりと容量を守る必要があるので注意してください。
妊婦さん・小さい子供・赤ちゃんがいる場合は注意
お客様からシロアリ駆除の薬剤は安全なのかどうか質問されることもあるでしょう。その場合は使用する薬剤を提示したうえで、人体への影響は限定的であるという旨を伝えることや、可能であればより影響の少ない薬剤に変更することも検討したいです。
ただシロアリ駆除や消毒の依頼を受けたお宅に妊婦さんや赤ちゃん、それに小さい子供がいる場合は要注意です。神経系の毒が含まれる駆除剤を大量に吸いこんでしまうと、胎児や乳幼児の発達に影響が出て、稀にアレルギー反応が出てしまう可能性があります。危険性について事前に説明したうえで安全性を最優先で薬剤を選び、当日は家を空けてもらうなどの対策をするようにしてください。
シロアリ駆除・消毒の仕事への適正や向いている人
シロアリ駆除・消毒を行う会社に転職した場合、シロアリを完全に除去するための技術力をつける必要があるのは言うまでもありません。ただ技術力は仕事を始めてから徐々に磨いていくことになります。シロアリ駆除の仕事をするにあたり、どのような適正が必要で、この仕事に向いている人をみていきましょう。
接客力・提案力が必要
シロアリ駆除・消毒はお客様の大切な住居や店舗に伺い、その床下に潜ることになります。お客様に安心して作業を任せてもらうには、気持ちいいあいさつや丁寧な説明など現場でのふるまいが重要です。黙々とただ作業をこなしていくだけでなく、接客力もある程度は求められます。
また、シロアリ駆除のために薬剤の量や散布場所をしっかりと提案しなければなりません。お客様の立場になるとあまり費用をかけたくないといえますが、シロアリを完全に駆除していくためには最低限のコストは必要です。
その旨を伝えるためにも、シロアリ駆除・消毒を放置した結果どのような被害を受けるのか、実例を出してお客様に納得してもらうことも大事といえます。テレビ番組や動画配信などでもよく見かけるように、世間一般的なイメージとしてシロアリは甚大な被害を連想させる害虫として認知されています。駆除・消毒作業もちろんメインとなりますが、現場でお客様に納得してもらうための提案力も必要となるでしょう。
ある程度体力や精神力が必要
仕事内容のところでも触れましたが、シロアリ駆除や消毒は狭い床下に潜り全体をほふく前進で移動しながら消毒液をまいていきます。作業場所によっては階段の隙間に針のような孔を空けて薬剤を散布することもありますが、シロアリの被害に遭う多くの例が床下です。
この作業を1日午前中と午後の2回行うこともあり、必然的に体力が必要になります。夏は暑いですし、冬は当然ながら寒くなります。体力だけでなく暑さや寒さへの対応も必須です。さらに、床下などは掃除や手入れがしづらい場所であり、シロアリ以外の害虫が住みやすい環境といえ、作業する上でも怯まない精神的な強さも必要となっていくでしょう。
また、絶対とはいえませんが、狭い場所に入り込むのでスリムな体系の方が床下での作業はしやすいです。
シロアリ駆除・消毒の仕事の給与や働き方
転職するからにはシロアリ駆除や消毒の仕事の給与や勤務時間も知っておきたいところでしょう。
シロアリ駆除・消毒の給与
まずはシロアリ駆除や消毒の給与を見ていきましょう。厚労省の職業情報紹介サイトによれば、害虫駆除業者の年収は平均372万円となっています。平均での算出ですので、いかに年収の高い企業へ転職するかがポイントといえます。
企業によっては、正社員はもちろんアルバイトからの採用もあります。アルバイトからの社員登用を行っている会社も多いので、自分に適正があるかどうか不安な場合、まずはアルバイトから始めるのも選択肢になるでしょう。
また求人はシロアリ駆除スタッフが多いですが、中には営業職の募集もあります。
※厚労省 職業情報紹介サイト
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/488
シロアリ駆除・消毒の勤務時間
シロアリ駆除・消毒の仕事の勤務時間は会社によって違うのですが、大体8時30分から17時30分の実働8時間とオフィスワークと同じようなスケジュールになっていることが多くみられます。また日曜日は休みで土曜日は変則勤務という週休二日制を採用している会社が多く、働きやすい環境だと言えるでしょう。
ただ、日中自宅にいられるのが週末しかないという共働き世帯も多いでしょうから、立ち合いが必要な仕事ですし、ローテーション制や休日出勤を依頼されることもあります。
シロアリ駆除や消毒のやりがい
転職するにあたり仕事のやりがいを重視する方も多いです。シロアリは建物に使われている木材や断熱材を食べてしまうため、放置していると家にダメージを与え、酷い場合は耐震性が損なわれるともいわれています。シロアリ駆除や消毒はお客様の大切な住居や店舗をシロアリから守る仕事です。作業の後にお客様から『ありがとう』と感謝されるのは、仕事を続けていく上でのやりがいになります。
まとめ
建築業界に転職といってもその仕事は様々で、シロアリ駆除や消毒もその職種の一つです。床下に潜ったり薬剤を扱ったりと決して楽な仕事内容ではありません。ただ給与や勤務形も安定していて、なによりお客様から感謝されるやりがいのある仕事です。
シロアリ駆除・消毒の仕事では、シロアリについての知識や害虫駆除の経験がある方だけが求められているのではなく、未経験者歓迎の求人も多く見かけます。建築業界への転職を考えているなら、シロアリ駆除・消毒についてもぜひ一度検討してはいかがでしょうか。
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