台風で飛ばされないための屋根の点検と対策

建築業界への転職を検討する中で、住宅の板金工事や外壁塗装業といった職種を考えている人は少なくないでしょう。仕事内容の幅が広く、経験が重視される建築業。未経験であればなおさら、知識不足のままいきなり仕事を始めるのはおすすめできません。

近年の長期化・大型化している台風に備え、住宅の屋根を補修する人は増加しています。

2020年9月に南西諸島・九州を中心に暴風が吹き荒れた台風10号では、894棟もの住宅が被害に遭い、防災・安全意識は年々高まってきています。(令和2年台風第10号による被害状況等について : 防災情報のページ – 内閣府 (bousai.go.jp))

そこで、板金工事や塗装業への転職を考えている人に役立つ基礎知識と、屋根の台風対策・点検について解説します。

転職前に知っておきたい屋根の構造

転職後に知識不足で慌てないよう、屋根のことを知っておくことは大切です。紫外線や風雨にさらされ、大切な建物を守っているのが屋根の存在価値です。普段目が届かない分、不具合が生じた時の被害は大きくなります。屋根の構造を知り、点検や修理時には最適な提案と対処に役立ててください。

垂木・野地板

屋根の土台となる部材であり、定期的なメンテナンスが必要です。

・垂木(たるき)

垂木は屋根を支えている重要な構造材で、屋根の骨というべき要の部分になります。垂木は屋根の傾斜に沿って、約45㎝間隔で組まれており、勾配のある屋根には必ず設置されて屋根材の荷重を支える役割があります。垂木と野地板の密着度が、屋根の強度や雨漏りリスク低下につながるのです。

・野地板(のじいた)

野地板は垂木の上に設置される屋根の基礎部分のことを指します。野地板は垂木にしっかり固定することが重要で、野地板の上に防水紙、屋根材を重ねて施工していきます。野地板は1800mm×900mm×9mm(または12mm)の構造用合板が主流で、耐用年数は20年から30年ともいわれています。

防水紙

防水紙は雨から室内を守るための、最後の砦とも言える重要な部材です。ルーフィングとも呼ばれる防水シートのことで、雨漏りを防いで、二次防水として室内を守る役割があります。防水紙は劣化や破損によって、雨漏りの原因になることがあります。防水紙は改質アスファルト、粘着タイプ、遮熱タイプなど多様な種類があるのも特徴です。

屋根材・棟

屋根材や棟は経年劣化により傷みやすく、台風で飛ばされることが最も多い部材です。

・屋根材

屋根の仕上げとして普段目にしている部材に当たります。屋根材は雨水を雨樋まで受け流す一次防水の役割があります。風雨や紫外線に常にさらされているため、経年劣化で傷みやすく、定期的に注意が必要な部材です。また、屋根材は瓦やセメント瓦、コンクリート瓦、スレート、ガルバリウムなど多くの種類があります。

・棟(むね)

棟は屋根の面と面が重なる頂点部分のことを指し、台風では最も被害を受けやすい箇所です。さらに雨漏りも発生しやすいので、屋根の弱点となる場所でもあります。棟はスレートには「棟板金」を取付け(瓦屋根には棟瓦)、雨水の浸入を防ぐ効果がみられます。

台風で屋根が飛ぶ原因

台風で屋根が飛んで行ってしまう原因として、「棟板金の劣化」「漆喰と棟瓦の破損」「屋根材の痛み」の3つが挙げられます。経年劣化による各部材の不具合や傷みは、放っておかず早めに対処することが被害を防ぐ最善の方法です。

棟板金の劣化

台風で最も飛ばされやすいのが「棟板金」です。屋根材のうち、スレートやガルバリウムの棟を覆っている板金のことを差します。反りや歪みなどの不具合が生じている場合、強風で破損し飛ばされてしまう可能性が高いです。

棟板金を固定している釘も、年数とともに熱膨張によって抜けていきます。そのまま放っておくとやがて棟板金が浮き、風で簡単に飛ばされてしまいます。

棟板金が外れると、棟の隙間から風が入り込み、屋根材までも吹き飛んでしまう恐れがあります。そのため、釘の緩みや抜けは屋根の点検において最も注意が必要な箇所といえるでしょう。

漆喰と棟瓦の破損

瓦屋根で棟瓦、丸瓦、のし瓦を固定して強度を保っているのが漆喰です。通常は白色をしている漆喰ですが、崩れて土が見えている状態は劣化が進んでいる証拠です。

漆喰にひびや剥がれが生じると、瓦の固定力が弱まってしまいます。風が吹き込みやすく飛ばされてしまう危険性が高まるため、瓦のずれや隙間には注意が必要です。

屋根材の傷み

瓦屋根において、瓦の割れやずれ、漆喰の崩れは致命傷となります。屋根材自体の反りも強風や暴風で飛ばされるリスクが高まり、後に住宅へ大きなダメージを与えかねません。

反りの原因は、撥水性が落ちたことで雨水を吸収し、表面から乾いてしまうことです。

築年数20〜30年のスレート屋根では、色あせやコケ、割れや反りなどを放置せず早めに修復することが大切です。

屋根が飛ばされると周囲に危険及ぶ可能性が高い

台風によってもたらされる被害は自宅の屋根だけではありません。たった1枚の瓦であっても、暴風によって飛ばされると猛スピードになりますから、他の建物や車にかなりの衝撃を与えることになります。ましてや、吹き飛んだ先に人がいようものなら大ケガの可能性もありますし、打ちどころが悪ければ最悪の事態になり兼ねません。

いくら台風が接近したとはいえ、どうしても外出しなければならない人もいるでしょう。警察や消防以外でも仕事で休めない人は日本中たくさんいます。たとえ車に乗っていてもフロントガラスやボディに衝撃が走ればハンドルを取られてスリップ事故を引き起こす可能性も否定できません。

特に外は暴風雨によって視界も悪くなり、瓦やがれきが吹き飛んでもほとんど見えません。屋根が飛ばされると周囲にも甚大な被害が発生する可能性を考えておきましょう。

屋根材別の点検と対策

屋根が飛ばされて甚大な被害を招く前に、定期的な点検と早めの対処が肝要です。ほとんどの屋根では、耐用年数にかかわらず、7〜10年に1回の点検とメンテナンスが推奨されています。特徴の異なる屋根材ごとに点検時のチェック箇所をまとめました。

瓦屋根

チェック項目

  • 漆喰のひび割れ、崩れ
  • 瓦の割れ、欠け、ずれ
  • 棟瓦の浮き

耐用年数が長く、塗り替えも不要なため、住宅の屋根として最適です。瓦を接合している漆喰は、経年劣化でひびや崩れを生じます。劣化は目視で確認できますが、高所作業は危険を伴うため専門業者へ依頼するのが良いでしょう。

薄型スレート屋根

チェック項目

  • 表面の色あせ、コケ、カビの繁殖
  • 棟板金の緩み、浮き
  • スレートの反り、ひび割れ

施工費用が瓦屋根より安く済み、コストパフォーマンスに優れています。しかし、スレートの割れや棟板金の不具合による台風被害も多く、こまめなメンテナンスが不可欠です。色あせやコケなど表面の劣化は見た目にも分かりやすいため、気づいたときになるべく早く対処するのが望ましいです。

金属屋根(ガルバリウム)

チェック項目

  • 表面の傷、サビ
  • 棟板金の緩み、浮き
  • 金属の隙間、歪み

強度が高く、スタイリッシュな見た目で人気を集めています。傷からサビが生じやすく、スレート同様に棟板金が緩みやすいのが難点です。

雨樋

チェック項目

  • ゴミが溜まっていないか
  • 継ぎ目が外れていないか
  • ひびや割れがないか

屋根材に次いで台風で飛ばされやすいのが雨樋です。ゴミが溜まっていると適切に雨水が流れていかず、雨漏りを引き起こしてしまう可能性があります。ゴミの重さでひび割れていたり外れていたりする場合、突然の台風で飛ばされ、思わぬ事故につながりかねません。屋根とともに雨樋のチェックも怠らないようにしましょう。

板金工事や塗装業に向いている人

屋根の修復や葺き替え、塗装工事などの仕事は未経験でも歓迎されます。コツコツと現場経験を積み、目標意識の高い人は確実にスキルアップが望める仕事です。しかし、常に屋外・高所での危険を伴う作業であるうえ、日常生活ではあまり触れることのない薬品を取り扱うことも多いのが事実です。

次の3項目に当てはまる人は、屋根の板金工事や塗装業に適性があるといえます。

真面目で向上心がある

危険と隣り合わせでもある建築業。安全第一でルールを守り、仲間と協力して仕事を続けていく真面目さは必須です。また、日々の努力と向上心が一軒一軒の完成度に直結します。人々の住まいの安全を担っているという自覚を持ち、責任を持って仕事に取り組む姿勢が大切です。

細かく地道な作業が得意

施工には長い時間がかかります。短期間で終わる作業ではないため、地道な作業を丁寧に続けていく根気が必要です。塗装においては、端から端まできっちりきれいに仕上げる細やかさも求められます。手先が器用で作業の緻密さに自信のある人や、真夏、真冬の過酷な天候にも挫けず黙々と仕事ができる人は、建築業に向いているでしょう。

臭いに敏感ではない

塗装に使われる塗料は総じて臭いが強く、頭痛や吐き気を引き起こしてしまう場合もあります。日常生活で芳香剤やアロマ、香水などのわずかな臭いも苦手な人にとっては、建築業は厳しい職場であるかもしれません。

しかし、初めは辛く感じても、毎日仕事をしていくにつれて徐々に慣れていきます。したがって、よほど臭いに敏感でない限り過度に心配する必要はないでしょう。

まとめ

屋根の板金工事や塗装業への転職に役立つ基礎知識と、台風対策・点検について解説しました。台風で屋根が飛ばされないために欠かせないのが、定期的な点検とメンテナンスです。大きな被害を未然に防ぐ重要な役割を担っている建築業。当記事で紹介した内容は、そんな建築業のほんの一部分に過ぎません。

自分の適性を見極めて判断することが、満足のいく転職につながります。転職後は、基礎知識を踏まえたうえで経験を積み重ね、自身の強みにしていって下さい。

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